不動産取引において特に注意が必要なのが「地面師詐欺」と呼ばれる手口です。これは、他人の土地や建物を自分のものと偽り、買主から多額の代金をだまし取る詐欺です。ここでは、地面師詐欺の典型的な手口と、実際に起きた大規模事件を解説します。

地面師詐欺の典型的な手口

地面師詐欺では、詐欺グループが偽造した本人確認書類や登記書類を用意し、本物の所有者になりすまします。買主は売買契約を結び、代金を支払いますが、登記申請の段階で書類の不備や偽造が発覚し、所有権の移転ができないことが判明します。その時点で詐欺師たちはすでに姿を消しており、支払った資金は回収困難となります。

また、登記書類の確認を売主側に任せきりにしたり、売主が指定する司法書士をそのまま受け入れてしまうと、詐欺グループと共謀している可能性もあるため、特に注意が必要です。売買代金の振り込みも、決済当日以外のタイミングを指定された場合は要警戒です。

実際に起きた大規模事件

2017年には、大手不動産会社が約55億円もの被害を受けた「積水ハウス地面師詐欺事件」が発生しました。この事件では、東京都品川区の高額な土地を巡り、偽の所有者を名乗る人物が現れ、巧妙に偽造された書類や権利証のコピーを提示して売買契約を締結。手付金と残金を合わせて巨額の資金が支払われましたが、登記申請時に法務局で書類の偽造が発覚し、詐欺であることが判明しました。結果として、支払った資金の大部分は回収できませんでした。

この事件では、打ち合わせ時に偽の所有者が誕生日や干支を間違える、原本の権利証が提示されない、所有者本人を名乗る人物から契約無効の通知が届くなど、不審な点がいくつもあったにもかかわらず、取引のスピードを優先したことが被害拡大につながりました。

被害を防ぐためのポイント

  • 登記書類や本人確認書類は、必ず自分で法務局にて原本を確認する

  • 司法書士は買主自身が信頼できる専門家を選ぶ

  • 売買代金の振り込みは決済当日に行い、それ以外のタイミングを求められた場合は慎重に対応する

  • 少しでも不審な点があれば、取引を急がず、第三者の意見を仰ぐ

地面師詐欺は巧妙化しており、プロの不動産会社でさえ被害に遭うことがあります。慎重な確認と冷静な判断が、被害防止の鍵となります。

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